山中教授の子育て論とは

Column

今では世界的に有名なノーベル賞受賞者の山中伸弥先生。

様々なメディアに登場されたり、書籍も出版されていますが、山中先生が子育てについて初めて執筆した本がこちら。

『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』

共著の成田奈緒子先生は、山中先生と神戸大学の同級生で、小児脳科学者。

二人の会話から、山中先生がどんな子供時代を過ごされたのか、分かります。

コタツを火の海にした

大学時代の同級生との対話形式というだけあって、本の中では山中先生のお人柄が随所に滲み出ています。

威張ったり、気取ったりしたところがなくて惹きつけられますが、初っ端から驚かされたのが

コタツを火の海にした

という衝撃のエピソード。

科学雑誌の付録についていたアルコールランプをひっくり返したという実体験です。

子供にそんなことをされたら、度肝を抜かれますよね。

山中先生もお母様からめちゃくちゃ怒られだそうですが、基本的には「ほったらかし」の家庭だったそう。

勉強しなさいと言われたこともなかったとお話しされています。

一貫性なんてなくていい

ノーベル賞受賞という偉業を成し遂げた山中先生ですが、若いころは研究対象が定まっておらず、テーマがコロコロ変わっていたと振り返っておられます。

しかし、当時、日本の研究分野においては、「継続」を評価する風潮があったため、山中先生も「果たしてこれでいいのか」という不安を抱えていたようです。

そんな折、山中先生は、日本人初のノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進教授の言葉に救われたと言います。

利根川先生は、「一貫性なんてなくていい。君自身が重要で面白いと思ったことをやればいいじゃないか」と言い切ったそう。

常識にとらわれないこと。物事を違う角度から見て捉えなおすことには勇気が要りますが、大切な力ですね。

山中先生のお話も素敵ですが、利根川先生の言葉にも考えさせられました。

レジリエンスを鍛える

本の中で一番心に残ったのは、「レジリエンス」についてのお話です。

「レジリエンス」とは、乗り越える力。立ち直る力を指します。

何かしんどいことが起きた時(例えば、コロナとか、病気とか、震災とか)、長く立ち直れない人がいる一方で、希望を捨てずに前を向ける人もいます。

この違いは、「レジリエンス」を身につけているかどうかだと言うのです。

「最近の子どもは、打たれ弱い子が増えた」なんて、よく耳にします。

最近の子ではなくても、私の職場でも、ある日メンタルの不調から、突然来なくなった上司がいました。

辛い出来事があっても、しなやかに生き抜く力って、今の時代、特に必要とされている力だなと感じます。

山中先生は、この「レジリエンス」は生まれつきの能力ではなく、後から鍛えることができるものだと唱えています。

人生には必ず浮き沈みがあります。いい時ばかりとは限りません。

自分の子どもたちには、苦しみを味わってほしくはないけれど、

悲しみとか、辛いこととか、願わないものが、いつか必ず何かは訪れるのだろうなと思います。

その時、私は困難そのものから子どもを守ってあげることはできないかもしれない。

それでも、困難を乗り超えられる強さ、しなやかさを持っていられるように。

まずは自分からだな、としみじみ感じました。

読む価値あり! 子育てのヒントがいっぱい!

本の冒頭に「ほったらかし」育児について書かれており、

正直な話、山中先生のような人にほったらかし育児を推されてもなあ、と思いながら読み進めました。

天才は、どんな環境であったとしても、本人の持つ力で花を咲かすことができるからです。

でも、「ほったらかし」育児の効果は、一理あると感じましたし、そのほかのお話やエピソードも面白かったです。

明日から実践できそうなヒントも沢山ありました。

特にレジリエンスのお話は、ポストコロナを生きる私たちにとって、すごく意義深い内容だったように感じます。

もともと友人に教えてもらった本でしたが、私も人にオススメしたくなるような一冊でした。

ぜひ手に取ってご覧ください。

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